昨今は様々なデジタルマーケティングツールがありますが、その中でも全てのデジタルマーケターが使ったことであろうプロダクトと言えば、Googleが提供するツール群だと思います。Adwords、DFP、AdExchange、AdSense。マーケターでなくとも一度は聞いたことがある用語ばかりだと思います。

最近、Googleは旧DoubleClickブランドを廃し、デジタルマーケティング関連のプロダクトをGoogle Marketing Platform(以下、GMP)に統合しました。市場にはDFPやDFAなどDoubleClickブランドは浸透してましたので、まだまだ慣れないのですが良い機会なのでそれぞれのプロダクトの特徴と、他プロダクトとの関連を説明してみたいと思います。

説明には、一部の業界人に評判のよかったこちらの方の下記を図を用いながら行なっていきたいと思います。とても複雑なのですが、簡潔にまとめられていて、分かりやすくてすばらしいです。

Google Marketing Platformの全体像

はじめにGMPの全体像と図の見方から説明していきます。図の見方としては、グリーンの枠がいわゆるGoogleのプロダクトを表現しています。オレンジの枠はエンティティと言われるもので、大手広告主(中小広告主)、大手媒体社(中小媒体社)、外部(Google以外の)DSPやSSPが表現されています。

図の左側にはBuy-SideまたはDemand。広告主など広告を出稿したい人たち。右側にはSell-SideまたはSupply。サイト運営者や広告枠を売っている人たちが記載されています。

デジタル広告の世界はネット証券に似ている?

個々のプロダクトの説明に入る前に知っておいた方がよいと思うことに、近年のデジタル広告の世界は、極めてネット証券の世界に似ているということです。

もしネット証券の講座をお持ちの方で、実際にネットで株の売買をされた経験をお持ちであればスムーズに理解できると思います。ネット証券の世界では、トヨタの株が70万円で売られていて、70万円で買いますと宣言(画面で購入ボタンをクリック)すれば70万円プラス手数料で株が購入できることが多いです。

購入できることが多いと言ったのは、その日とてもトヨタの株価人気で、71万円出しても買いたいという人がたくさんいた場合は、71万円出した人が購入し、70万円購入しようとしたあなたは購入できないことがあります。要はオークションが行われているわけですね。高い額を提示した人が落札します。そしてこのオークションはとても高速で行われていて、1秒経たないうちに途轍もない数のオークションがリアルタイムに行われているわけです。

簡単にネット証券のオークションの説明をしましたが、実はデジタル広告の世界でも似たようなことが行われています。あなたがChromeなどのブラウザであるサイトを訪れたとします。その時にそのサイトにある広告枠からいろんな業者にこの広告枠に広告を表示する気はあるかと問い合わせて、複数の業者から入札が行われ、複数の入札がある場合はオークションが行われ、落札した業者の広告がサイトに表示されています。これら処理が1秒もかからずに処理されています。あなたが普段、いろんなサイトで見ている広告はオークションで勝ち抜いてきた広告なのです。ちなみにオークションでない広告枠もありますが、基本的にはGoogleの広告枠ではオークションされています。

ちなみに図では真ん中の3番のところが”Auction”となっていますね。DemandとSupplyの真ん中でオークションされているということになります。

GoogleのDemand側プロダクト

Demand・Buy-Side側とは広告業界では広告主側・広告出稿側を指します。

Adwords : 世界一有名な広告配信プラットフォーム

Adwordsは実質、世界で一番使われている広告配信プラットフォームではないかと思います。図では「Small Advertiser」からのみ線が引かれていますが、SearchAds(検索連動)の配信がAdwordsからのみできるということもあり、実際には自社でデジタルマーケティング広告を運用されている大手企業などもAdwordsを使用しています。図では主にディスプレイ広告にフォーカスしていることもあり、中小企業向けのプロダクトとしてポジショニングされているのでしょう。

Adwordsではどのような広告が配信できるかと言うと、サーチ、ディスプレイ、動画広告などあらゆるフォーマットの広告が配信可能です。なので、実質Adwordsを極めるとあらゆるデジタル広告に対応できるということになります。買い付け可能な媒体としても、Adsense、AdExchange、Youtubeが対象です。個人的には国内の媒体では一部の超プレミアメディア以外はほぼリーチ可能だと思います。Facebook、Twitter、Line以外のオープン在庫にはほぼリーチできるAdwordsは実質国内では唯一無二の存在です。個人、中小企業、大手企業問わずデジタルマーケターを目指すならまずはAdwordsを使いこなせる必要があるのではないでしょうか。

DBM: GoogleのDSP

DoubleClick Bid Manager(以下、DBM)はGoogleのDemand Side Platform(以下、DSP)です。DSPは前述のオークションの際に入札を行う機能を有します。(Adwordsにもその機能は今はあります。元々はサーチ向けのプロダクトでした)

図では「Large Advertiser」向けのプロダクトのように記載されていますが、Adwordsとの違いは何なのでしょうか。DBMはディスプレイやYoutubeなどの動画広告を配信できますが、Adwordsも今では同じことができます。実際のところ広告配信機能では大きな差がないように思います。

違いは広告配信というよりは、案件管理とデータ連携にあると言えます。管理機能というのは、どちらかというと広告代理店向けですが、複数の広告主の案件を効率よく管理したり、案件ごとによってマージン率を変更したり、クリック課金なのかimp(広告表示回数)課金なのかなどきめ細やかな設定が可能です。Adwordsはクリック課金が中心なので、DBMでは案件によってオークションへの入札戦略を設定できたりします。Adwordsは基本的には機械学習によって自動的に最適化する手間をかけない運用がコンセプト、DBMはマニュアルによるきめ細やかな運用が可能といった違いがあるかもしれません。

もう一つの特徴はデータ連携です。 DBMでは多種多様なデータプロバイダーとの連携が可能です。国内にもIntimateMergerやAudienceOneのようなDMPがあり、「金融」「自動車」に興味がるなどのセグメントを有料で連携してもらうことが可能です。車のキャンペーンであれば当然、自動車に興味がある人に広告配信した方が良い効果が期待できますので、データを使った配信はデジタルマーケティングでは検討するべき手法です。ただデータプロバイダーとの契約やデータ使用料など手間と資金が必要になってきますので、ある程度の規模がないと手が出ないかもしれません。それらを鑑みてもDBMは「Large Advertiser」向けというのは納得です。

Google Campaign Manager : 第3者配信アドサーバー

Google Campaign Manager(以下、GCM)は旧DoubleClick For Advertiser(以下、DFA)で展開されていたプロダクトで、第三者配信アドサーバー(3rd Party Ad-Server、3PAS)です。GCMは先日、Amazonが買収を発表しましたSizmekと競合するプロダクトです。3PASの機能や使用するメリット等については、先日の記事に記載しましたので、そちらを参照してください。

Google Analytics : 事実上のサイト分析ツールのデファクトスタンダード

ご存知GoogleAnalytics(以下、GA)です。GAは無料で使えるサイト分析ツールで、多くのサイトで使われています。競合ツールとしてはAbodeの類似製品があるのですが、こちらは有料のためシェアで言うと個人の感覚では99%ぐらいのサイトではGAが使われているのではないでしょうか。個人から大手法人まで幅広い層のサイトで導入されています。

図では左側のDemandエリアにのみ記載されています。実際には媒体側のサイトにも導入されているのに、なぜDemand側だけに記載されているのでしょうか。それは、図にはいわゆるマーケティング視点で関連するプロダクトのみ記載されているためと考えられます。

どういうことかと言うと、分析ツールとしてのGAはもちろんSupply側の媒体にも導入されているのですが、実はGAにはマーケティングツールとしての機能も備えられており、それがDemand側にのみGAが記載されて理由だと思われます。

GAには広告配信プラットフォームであるAdwordsなどと連携する機能があります。その機能により広告主のキャンペーンサイトに訪問したことがあるユーザーにのみ広告を配信するためのセグメント作成ができたり、AとBのページを閲覧したユーザーなどのセグメント作成が可能で、広告配信プラットフォームへ連携できます。なので、GAからAdwords、GDN、DBMへ矢印が出ているわけですね。

GoogleのSupply側プロダクト

Supply・Sell-Side側とは広告業界では広告主側・広告出稿側を指します。

Youtube : PV数No1の動画サイト

Youtubeは説明不要のNo.1動画サイトですね。数年前から動画再生中に広告が表示されるようになりました。最近は「YouTube Premium」という月額980円で広告が表示されなくなる有料プランなども存在します。

動画再生の時に流れる広告は図によるとAdExchange経由でオークションが行われて、もっとも高額な値をつけた案件が流れてきていることがわかりますね。

媒体者アドサーバーは主にサイト運営する法人向けのプロダクトです。サイトの収益化という点では、Adsenseと同じなのですが、違いは案件管理ができることでしょうか。Adsenseは基本的にタグを貼って終わりでどの案件を流すのかについてはGoogleにお任せですが、GoogleAdManagerを使うと自社の営業が獲得してきた案件を優先して配信し、案件がないときはAdsenseを流すと言ったような制御が可能になります。

基本的には収益の高い順から流していくことが多いですね。図では「External Exchange and SSP」への矢印もありますが、これはGoogle以外のSSPなどの案件を流すこともできるためです。なので、多くの媒体者ではGoogleだけでなく、その他のSSPからも案件を獲得していますので、それによってサイトの収益の最大化を目指しています。

Googleはこの媒体者アドサーバーを基本的に無料で提供しています。なので、シェアは圧倒的です。この媒体者アドサーバーを提供し、多くのサイトに導入してもらうことで自動的に(使わないこともできる)それらの広告枠の在庫をGoogleAdxに出すことができているわけです。Googleとしては優良な広告在庫を媒体営業なしで獲得できるメリットがあります。優良な広告在庫を獲得することで、Adwordsを使っている広告主にとっても価値を提供できます。結果的に多くの広告主を集めることでGoogleの収益も増えますのでGoogleの高い戦略性が見て取れます。

媒体としては、良い案件があれば流すことで収益化できますから、自社獲得案件がない場合はGoogleの案件でマネタイズしていくというのが実質的には法人媒体ではデファクトスタンダードな手法となっているのではないでしょうか。

Adsense : サイトのマネタイズの王道

Adsenseは個人ブロガーから、企業運営のWebサイトまで幅広く導入されている広告ネットワークです。HTMLにAdsenseのタグを貼るだけで、サイトにマッチした広告を表示してくれ、ユーザーのクリック数に応じて広告収入が得られます。Webサイト運営を行い収益化していく上で、もっともメジャーな選択肢の一つです。図を見ると、Adsenseの広告はオークション経由でAdwordsやDBMに入稿された広告が配信されていることが分かります。Adsenseに表示される広告もオークションで決定されているのですね。

Auction + GoogleAdx

DemandとSupplyの主な紹介が終わったところで、Auction + GoogleAdxの説明をしたいと思います。図にある「Auction」ですが、実際はAuctionというようなプロダクトがあるわけではなく、ここではコンセプトを分かりやすくするために便宜的に記載されているのではないかと思います。

Auctionは基本的にはGoogleのサーバー内で行われています。複数のDSPに対してAsenseやAdxの広告枠から送られてきたリクエストに対して、広告を出すか出さないか問い合わせしています。この時にオークションに参加するDSPはAdwordsやDBMだけでなく、外部のDSPも参加します。日本国内の場合でも20社近くのDSP業者が参加しているのではないでしょうか。

このようなオークションの仕組みを一般的にはReal Time Bidding(リアルタイムビディング、以下RTB)と呼んでいます。オークションを行う業者をSSPやAdExchangeと呼んでおり、日本国内にもGoogle以外にもこのようなRTBオークションを行うプラットフォームが存在しています。ちなみにこのオークションですが、黎明期はそれぞれのオークション業者の使用で実施されていたりしたのですが、最近ではこちらの団体の仕様がデファクトスタンダートになっています。興味のある方は見てみてはいかがでしょうか。

RTBオークションですが、複数の業者間でのサーバー間通信が要求され、技術的にはなかなか高度です。一つ一つの取引にはだいたい0.5秒以下で行われ、Google規模になると月間で数千億のトラフィックをさばいていると思われます。これだけの規模のトラフィックをさばくのは、ネット証券のシステムも同様だと思いますが、サーバーへの負荷を考慮したプログラミングが必要とされ難しいようです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。少しはお役に立てたでしょうか。

デジタル広告の世界は極めて複雑化しており、最近ではより簡素化を目指した活動もアメリカなどでははじまっているようですが、まだまだ本日説明した仕組みが主流であるというのが実情です。

デジタル広告という領域では、本日ご紹介したディスプレイ広告でなく検索広告もあり、だいたい市場規模ではどちらも5,000億円規模の市場となっています。検索広告の方は、実質はGoogleの検索エンジンが国内ではほぼ95%ぐらいのシェアになっていると思いますのでもっとシンプルだったります。

ディスプレイ広告と似たようなに使われる用語として、運用型広告というもの存在しています。基本的には大きな枠組みでは同じですが、オークションが行われない広告案件という理解が割と近いのではないかと思います。本日、ご紹介したGoogleAdManagerで営業が獲得(もしくは代理店)する広告案件という理解でもよいと思います。

いずれにしても、デジタル広告市場は停滞するその他のマスメディア広告を尻目に毎年成長を続けて、2018年度では1.8兆円近い規模になっております。長年、広告の主軸であったテレビ広告にも並ぶ規模になっているわけで、この勢いはまだまだ続きそうです。市場規模の拡大は、今後ディスプレイ広告に関わる仕事をする人が増えることにもつながってくると思いますので、ぜひ興味を持っていただければ嬉しく思います。