5/31にAmazonよりSizmekのアドサーバ事業の買収の発表がありました。

こちらの記事にありますように、どうやらAmazonが破綻申請したSizmekのAd Serving関連の技術を引き継ぐようです。ステータスは交渉中とのことですが、締結が近そうとのこと。もしこの案件が締結された場合にはどのような影響があるのでしょうか。考えてみたいと思います。ちなみに買収額は100億-500億のレンジになりそうとのことです。

https://marketrealist.com/2019/05/why-amazon-is-eyeing-bankrupt-sizmek

Amazon広告ビジネスのアメリカ市場でのシェアはどれくらい?

まず現場のAmazonの広告ビジネスですが、下記の図によるとアメリカでは約9%のシェアを占めているようです。Googleがダントツで37%ほど。2位のFacebookが21%ほど。なので、まだまだ3位のAmazonとは大きな差があります。ちなみに4位がMicrosoftで4%ほどです。

2018度アメリカのデジタル広告シェア
Source: https://marketrealist.com/2019/05/why-amazon-is-eyeing-bankrupt-sizmek/

いつもこういう資料を見たときにきになるのですが、上がってくる会社はテック企業ばかりなんですね。従来の広告代理店はもはやテック企業に主役の位置を奪われたのでしょうか。ちょっと気になったりします。もしかしたら、海外の広告代理店はWPP Groupなど多くの会社がグループを形成しているので、日本でいう電通や博報堂のような単体で巨大な広告代理店が存在しないので、このようなランキングには入ってこないのかもしれません。いずれ調べてみようかなと思います。

アメリカの広告市場規模は?

ただUSのオンライン広告市場規模は$129.34 billionとのことなので、14兆円規模(?)です。そのうちの4割近いシェアを持つGoogleは5.6兆円の売上ということになります。この規模を持つ従来型の広告代理店は存在しないはずなので、このようなランキングに広告代理店が入ってこないのは必然かもしれません。

参考までに電通の連結売上は2018年度で5.3兆円らしいです。連結なのでグローバル規模の売上ですね。この電通グローバルの売上をUS市場単体で上回ってくるGoogleやはり半端ないです。もちろん利益率などはテック企業と代理店では比べるまでもなく、テック企業の方が上回っているはずです。改めて数字を見るとアメリカのテックBIG4、すごいです。

Amazonは9%ほどのシェアなので、14兆円の1.2兆円ぐらいですかね。あれ、日本国内のオンライン広告市場規模が1.7兆円ぐらいだったような。規模が違いすぎて、切なくなります。

Sizmekのアドサーバー(3PAS)とは

さて今回Amazonが買い取ると噂されているアドサーバー事業ですが、これは3PAS(第3者配信)のアドサーバーのことであると考えられます。3PASアドサーバーというのは簡単に言うと、広告配信するときにGoogle、Facebook、XXXネットワークなど通常マーケティングの運用担当は多くの媒体に対してクリエイティブを入稿する必要があります。初期設定だけならよいのですが、途中でクリエイティブを変更する必要があったり、結構運用は大変で面倒だったします。そのときにSIzmekのアドサーバーの機能を使うと、Sizmekにクリエイティブを入稿しておいて、他の媒体はこのSizmekのクリエイティブを参照するように設定することができます。このような機能が3PASアドサーバーの特徴で、マーケティング担当者の運用工数を大きく削減できます。

またレポート作成の面でも3PASを使うメリットがあります。通常、レポートは各媒体ごとに出力されるので運用担当者もしくは代理店の人が手動で集計したり、分析したりしなければいけないのですが、3PASを導入しておくとレポートが3PASアドサーバーに集計されるので、手動で集計する手間を省くことできます。また分析面においても、ユーザー数などが各媒体ごとのユーザー数ではなく、媒体横断でのユーザー数の分析ができたりして、より正しい分析が可能です。少しややこしいですが、私がある商材の広告をGoogle経由で見るとGoogle上では一人が見た。同じ商材を Facebookで見るとFacebook上でも一人見た。単純計算すると、2人が見たとなるのですが、Sizmekを使った場合は媒体を超えてキャンペーン全体でユニークユーザーを計算できるので実際には1人しか見てない。と正しいことがわかります。

SizmekのアドサーバーをAmazonが買い取る意味は?

簡単に3PASのアドサーバーについて説明したところで、この3PASアドサーバーをAmazonが買収することの影響を考えてみたいと思います。Sizmekのアドサーバーは日本国内ではYahooJapanが導入していたことで有名です。数年前から、ヤフートップページの左右に細長い広告が表示されるようになってきましたが、それもSizemekを利用していたはずです。個人的な見解ですが、この3PASアドサーバーの領域ではSizmekは先駆者で当時はとてもユニークなポジションを築いていました。競合は国内のローカルプロダクトが存在していたものの、どちらかと言うとマーケティングに明るい人材がいない中小企業向けで、プロダクトの機能面ではある程度の規模の会社では常に候補にあがるレベルでした。

補足ですが、ではなぜそれほどのレベルのプロダクトを開発できる会社が破産に追い込まれてしまったのかについてですが、数ヶ月前のニュースなどをみている限りでは、この3PASアドサーバー以外の領域(DSPなど)のプロダクトを買収したことが原因の一つだったようです。実際にはそれほど価値のないプロダクトを高値で買収し、それを自社の競争優位性に結びつくところまで持っていくことができなかったと、どこかの記事に書いてあったと記憶しています。(時事ネタになりますが、ライザップが日本国内で似たような状況にあるのではないかと思います)

DoubleClick Campaign Managerの存在

もう一つ思い当たるのが、DoubleClick Campaign Manager(以下、DCM)の存在です。Sizmekが出てきたときはSizmekの競合としては認識していなかったのですが、近年はSizmekよりも使われることが多いのではないかと思います。完全にSizmekアドサーバーの競合なのですが、これ実はGoogleです。GoogleがDoubleClick社を買収し、長らくDoubleClickブランドでプロダクトを出していたのですが、最近のGoogleの広告プロダクトのリブランディングのの一環で名称変更されたような記憶がありますが、詳細は忘れました。まだDCMの方が浸透していると思います。

Sizmekが破産に追い込まれた背景としては、このDCMの存在があると思います。このDCMとの熾烈なシェア争い、実際にはこの他多くの広告プロダクトを有するGoogleとは競争にならないのですが、の末、3PASアドサーバー単体ではこの先戦っていけないと判断し、DSPなどの買収に走った可能性がありそうです。完全に個人の憶測です。結果、実力以上の高値で掴んでしまい、会社全体の競争力も衰えていった、のか。。

2019年以降のAmazonは広告領域でも躍進する?

いずれにしてもAmazonは3PASアドサーバーを手に入れたのですから、広告領域のプロダクトとしても完全にGoogleに近づきつつあります。Display領域ではすでにプロダクトを持っていますし、Youtubeや検索広告はないものの、Amazon内での広告はGoogleにはないもの。3PAS領域はこれで互角。今までになかった武器を手に入れたAmazonの広告シェアは近年以上に躍進する可能性があり、1年間に3-4%ぐらいシェアを延ばす可能性があります。Googleはすでに昨年1%弱ですが、シェアを落としているわけで、もし今年さらにシェアを落とすことになれば今の地位も安泰ではなくなってくるかもしれません。

Google以上に攻め立てられる可能性があるのは、2位のFacebookですがFacebookの広告は基本的にはFacebookやInstagramといった自社のサービス内広告が中心です。外部のプレーヤーの動向関係なく、プラットフォームのユーザー利用者数を伸ばすことができれば広告収益も伸びると考えることはできますが、デマンドの視点ではどこに広告を出稿するかべきか。どこの媒体に広告出稿することが効果がもっともよいか、という観点でGoogle、Amazonなどど比較されるのは避けられないはずです。

Amazonの広告ビジネスの今後の日本での展開は?

いずれにしても3位のAmazonが新しい武器を手にした状況で、今後はどのような展開を見せるのでしょうか。激変するUSの広告業界の勢力図は今後も注視していく必要がありそうです。またGoogle・Facebook・Amazonはすでに国内でも圧倒的な存在感があります。AmazonはUSよりも少しまだ出遅れているものの、次の2、3年で大きく浸透する可能性はあります。Google・Facebookはすでに日本国内においても盤石の地位ですし、YahooJapan含めて3強だとは思うのですが、この3強がAmazonの台頭でどのように変わってくるのか。またLineや日本では好調のTwitterもありますし、今年、来年あたりはアメリカだけでなく日本国内でも新しい動きがありそうです。Amazonがいずれにしても、広告業界でも話題の中心になる可能性は高いのではないでしょうか。