前回、デジタルマーケティングの全体感を簡単に説明しましたが、デジタルマーケティングには様々な手法(チャネル)があることを理解していただけたかと思います。今回はもう少し踏み込んで、説明してみたいと思います。

まず下記のような図を作成してみました。簡単に説明すると、phaseでどのような顧客をターゲットにマーケティングしていくのかを表現しています。New:新規顧客または今は(企業・商品に)興味がない人(知らない人)。Interest: 興味関心があるひと。Visit: サイトに訪問した人。Relation: 実際に購入した人です。

Userでは、ユーザーが次にどのような行動をするかを表現しています。興味関心がある人は検索したり、比較サイト見たりするだろうな。訪問した人は、次に購入する(またはしない)。購入した人は次に、再度購入するかもしれないし、2度と買わないかもしれない。

Channelのところでは、どのような顧客に対してどのチャネルでアプローチしていくのかを表現しています。

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デジタル広告 : ads

一般的に特に広告を表示するユーザーを制限しないブロード配信やノンターゲティング広告や、年齢や性別を指定するデモターゲティング、「車好き」「エンジニア」などインターネット上のデータを使ってそのユーザーが興味ありそうなセグメントを作成し広告配信するオーディエンスターゲティング広告もこの領域に当てハマると思います。オーディエンスターゲティングについては、何かに興味がありそうな人に対して広告配信するのだから、Interestにかかる気はしますが、実際に何かを検索した時に表示されるGoogleの検索広告に比べると行動を起こしていない点と、データを使っているものの推測の可能性の域を出ないことが多いのでこちらに分類しています。

サーチ広告、検索連動広告 : Search Ads

Googleなどで検索した時に検索キーワードに関連する広告が表示される広告です。ユーザーが何かを検索した時に広告が表示されるので、ユーザーの興味関心にマッチしていることと、ユーザーが「いま」探しているこの瞬間に広告を表示できることが非常に特徴的で強力です。

ちなみに検索広告といえばほぼGoogleとYahooの2社で圧倒的なシェアを占めていますが、アメリカではAmazonの検索広告もかなり伸びているようです。Amazonが提供するのは、ユーザーがAmazonのサイト内で検索したキーワードを元に広告表示するもので、GoogleよりもさらにAmazonの方がユーザーの購買に近いということから、パフォーマンスが良いそうです。パフォーマンスというのは広告投資効果のことです。

いつものパン屋で例えると、おいしいパン屋ないかなと探している人に広告を出すよりも、スーパーのパン売場でパンを選んでいる人に「うちのパンおいしいですよ。買ってください」というアプローチをしているようなイメージでしょうか。とっても強力ですね。Amazonは日本でもサービスをどんどん強化していくようですので、今後ものを売りたい人たちにとっては必須の広告メニューになるかもしれません。

リターゲティング広告、追跡型広告 : retargeting ads

リターゲティング広告はサイトを訪れた人に対して、再度広告を表示する手法です。サイトを一度訪問しているので、あなたの企業・商品に興味がある可能性が高く、購入してくれる可能性も高いです。追跡にはクッキーという技術を使います。(またいつか解説したいと思います)

一度訪問していることから、購買に繋がりやすいので多くの企業が利用しています。ポイントは、訪問客のみ対象になることから、ターゲットになるユーザー数が少なく配信量が制限されるケースがあるということです。また新規顧客にはアクセスできないので、リターでティングだけやっていればビジネスが成長していかないことがあります。パン屋だと一度来てくれたお客さんだけでなく、新規のお客さんも増やしていかないと商売が上がったりです。

SNS

SNSは非常に強力なツールで新規顧客から、既存顧客まで幅広い層にアプローチ可能です。この場合、Facebook広告・Twitter広告などはadsに分類するものとし、ここではいわゆる企業ページなどへのコンテンツ投稿を扱うものとします。

比較的低価格もしくは無料でアカウント開設できるので、多くの企業が導入されています。有益なコンテンツであれば、ユーザーが広めてくれるので非常に強力でコスト効率の良いマーケティングチャネルです。一方、扱いを間違えると炎上してしまうリスクもあります。炎上を避けるためにいくどもの審査を実施すると尖った企画が通らなくなることもあり、なかなか運用が難しい課題もあります。メディア費用という点で広告のように予算がかからないものの、企画・コンテンツ制作を行う人件費は必要になるので、その人件費込みの費用対効果などを他チャネルと比較しながら運用することが求められます。Facebook、Twitter、LINEなどが有名です。

Owned Media / SEO

オウンドメディアは自社でメディアを運用することです。(もしくは委託)自分たちが発信したいことを発信できるので、コントロールできることが多いですし、また継続的にコンテンツを発信することでファンを作ることも可能です。かなり強力なチャネルですが、多くの企業では成功する前に放置されてしまうことも多いようです。

オウンドメディアの難しさの一つは、集客にあります。インターネット上でメディアを新規に立ち上げるということは、人が一人も歩いていない路地に店を構えている状態と言えます。どれだけおいしいパンを作ろうとも、人が歩いていなければ客は来ません。パン屋の場合も立地が悪くても味がいいので、口コミで評判になり客が訪れるようになった事例はたくさんあると思いますが、そのはじめのお客さんを呼び込むのが難しいのです。社員による口コミやSNSを使って拡散などいろいろありますが、結局のところ持続的に集客していくためにはGoogleの検索結果に上位表示してもらうことが重要になってきます。(実はYahooも検索エンジンはGoogleのを使っているので、日本ではGoogleの検索エンジン対策だけすれば良いことになります。なんという幸運でしょう)

で、オウンドメディアの企画・運用は総じてマーケティングチームによることが多く、SEOなどの知識もないままに運用し、訪問数(Page View、以下PV)が伸びず、モチベーション低下や評価されないことなど理由に放置されることが多いです。評価についてコメントすると、SEOによる集客で実際にビジネス上のゴールに貢献するために非常に長い時間が必要です。最低1年は見ておく方が良いと思いますが、そのあたりの勘所もない上司が半年ごとの査定で悪い評価をつけてさらに担当者のモチベーションを下げるケースもよく耳にします。SEOはある程度長い時間がかかる反面、一度軌道に乗ると継続してかなり割安に集客可能な手法なので、適切な企画・運用ができれば強力なマーケティングチャネルになると思います。

3rd Party Media

これは他社が運営するメディアに記事を掲載してもらうことです。お金を払って掲載してもらうケースもあれば、向かうから依頼が来るケースもあります。先ほどのオウンドメディアと違ってすでに多くの読者を抱えていることが予想されますので、自社のことを一切知らないユーザー層とも接点が持てるという点で有益です。機会があれば積極的に活用していくのが良いと思います。

Press release

こちらもお馴染みの手法ですが、とても有用です。コントロールできないこともありますが、低価格で大きなインパクトが期待できる手法です。特にサービスの立上げ時などには試してみるのがオススメです。

Referrals / coupon

こちらも最近見る機会が増えましたが、お友達紹介のことです。クーポンがついているケースも多いですね。チャネルとしては既存顧客のことです。この仕組みの有用なことろは、紹介を依頼するユーザーがすでに自社の顧客になっているケースです。自社の顧客なのである程度の情報がすでにデータベースの中にあるので、自社のことが好きそうな、または購入額・頻度が大きいユーザーを対象にお友達紹介を依頼するなど、起点となるユーザー層を特定しながら施策を打てる点が魅力的です。

また紹介者にもメリットがあることで、すでに顧客になってくれているユーザーのエンゲージ向上にもインパクトがありそうなところがいいですね。このような点が最近、類似のキャンペーンを実施する企業が多い理由だと思います。

email

emailは既存顧客に対するデジタルマーケティングの王道の一つです。emailアドレスを登録してもらう必要があるものの、会員登録や購入してくれたユーザーのアドレスは基本的には取得していると思うので、使う機会も多いと思います。

emailアドレスがあれば費用をかなり抑えてマーケティングできるので、昔から有効なチャネルでした。クーポンなどがついているメールも多いですね。ただ昨今のトレンドとしては、プロダクトの中のデータと組み合わせて、このページを見たら、この訴求。ここの登録がない人にはこの訴求など。ユーザーの行動履歴をベースに送信する内容のメール文面をユーザー個別に変更できたり、自動でメール送信することができるようになってきています。マーケティングオートメーションと呼ばれることもあります。

マーケティングオートメーションは以前であれば、コールセンターのオペレーターが行なっていたシンプルな作業、例えば「資料請求してくれたユーザーから7日以内に申し込みがなければ、確認のメール(昔は電話だったかも)を送る」などを自動化することができるので人件費の削減という点でもメリットがあります。また様々なデータを蓄積し、分析することで業務改善にも繋がってきます。先ほどの例だと、7日以内に申し込みがなければ、というのをトリガー(条件)にしてましたが実際にデータを分析すると申し込むユーザーは3日以内に申し込んでいることがわかれば、7日でなく3日に変更した方が良いかもしれません。シンプルな事例ですが、このような改善を数多く行なっていくことで高い成約率・購入額の向上などにつなげていきます。

このマーケティングオートメーションはプロダクトのデータ構造やエンジニアリングチームとの折衝、高度なデータ分析など純粋なマーケターだけではハンドリングできないことが多く、エンタープライズ領域ではITコンサルティング企業の存在感が大きくなっています。かなり投資額は大きくなりますが、それほど効果改善が期待できるということなのかもしれません。

chat bot / チャットボット / web接客ツール

chato botも近年大きな期待を集める領域で、多くのスタートアップ企業が開発しています。Webサイトを訪れた際に、ポップアップなどでチャットすることでユーザーの離脱を防止すると同時に、データも得られるので今までは分からなかったユーザーの気持ち(インサイトなどども言う)の分析もでき調査ツールとしての側面もあります。

今までのWebサイトは情報は揃えるけれどもあくまでユーザーが自分で探す必要がありましたが、chat botを利用するとやりたいことを伝えるだけで必要な情報が出てくるのでユーザーの体験としては便利になります。

まだまだ新しいツールなので、精度に課題がある場合もありますが、AIの技術の進化に伴い今度は精度も大きく改善してくることが期待できます。

Site / Product

これはユーザーがログインすることが前提ですが、サイトにログインした時に出る「お知らせ」などのことです。ログインユーザーなのでエンゲージも高く(アクティブユーザーであるし)、行動履歴もプロダクトのデータベースに残っているので、特定の条件にマッチするユーザーにのみ任意のメッセージを表示させることができるなど極めて使い勝手の良いチャネルです。

アクティブユーザーのエンゲージメント向上(リテンション)については、マーケティングチームなのか、プロダクトチームなのかは各企業によって別れるところで、それぞれの守備範囲がちょうど交錯するところでもあるので、折衝が大変だったりと言う点であまり活用されてないケースもあります。