Googleが1月14日に2022年をメドにChrome上でのThird Party Cookieのサポートを終了するようです。詳細はこちらのAdweekの記事にあります。日本語版では少し短いですが、ITMediaの記事が参考になりそうです。このニュースは海外でも大きな反響を呼んでいるようです。

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Third Party Cookieとは

このブログでも何度か取り上げている話題ではありますが、Third Party Cookieとは事業運営者もしくはサイトの運営者出ない、第3者によって付与されたCookieということになります。このブログで例えると、このサイトの運営者の私(システム)が何らかのCookieを付与を付与すれば、それはFirst Party Cookie。私がどこかのツールを使っていて、そのツールがCookieを付与していればそれがThird Party Cookieということになります。よくあるのは、分析ツールや広告配信プラットフォームがThird Paryのケースかと思います。

WebブラウザによるCookie規制と背景

WebブラウザによるCookie規制ですが、これは別に新しいことではありません。すでに何年か前からAppleはSafariのブラウザで同様の対応をしております。広告を主な収入源にしていないAppleはユーザーのプライバシー強化を理由にSafari上でのCookie利用を制限し、安全・安心なブラウザとしてのポジションを強化してきましたが、広告収入を主な収益源としているGoogleがこのような処置を取ることは可能性としてはありうるものの、自社の広告ビジネスにも影響しかねない処置を実際に行うのかについては、注目を集めていました。

昨今のインターネット環境のトレンドとしては、ブラウザ業者はユーザーに対してセキュリティを強化することが求められているので、WebブラウザとしてのChromeとしては対応したいが、広告収益が下がっては困るというビジネス面での課題があり、競合より対応が遅れていたのかもしれません。ただ、Appleから遅れること数年で、自社の広告収益を下げない、つまりはGoogleの広告プロダクトの特徴であるユーザーターゲティングの制度をCookieがなくても維持できる目算がたったので、今回の発表になったのかもしれません。

技術的な観点だと、Googleは広告業者としての顔だけでなく、GmailやGoogleAPPsなど様々なサービスをクラウド上で提供しており、とてつもない数のログインアカウントを保持(個人情報含め)しているので、正直Cookieがなくても広告ターゲティングを行うことは可能なのだと思います。

ChromeのCookie規制によるインパクトは?

さて、ここからは今回のGoogleによる対応が実装された時のインパクトを考えてみたいと思います。まず日本におけるChromeのシェアですが、PCとモバイルの合算になってしましますが下記のチャートでは約45%のようです。圧倒的なシェアですね。

ちょっと関係ないですが、IEは急激にシェア落としてますね。あとモバイルだけで見ると日本ではiPhoneのシェアが高いこともあってSafariの存在感がすごいです。PCとモバイルの合算でも第2位のブラウザで、Safariの存在感も大きいです。

日本の

このような状況からChromeがThird Party Cookieを規制した場合のインパクトとしては下記のことが考えられそうです。

  1. Googleの広告業者としての地位がさらに強固になる
  2. Google以外のプラットフォーム業者の広告ビジネスでの存在感も増す
  3. 1と2以外の広告業者は厳しくなる
  4. Google以外の計測ツールベンダーの計測精度が落ちる

1については、GoogleはChromeでThird Party Cookieを制限しても、自社の広告精度を維持する別の方法の目算があることが前提なのですが、Googleなので当然それは実現できるのでしょう。確実にGoogleの広告市場での存在感は増すと予想されます。

2については、ChromeとSafariの2大勢力がCookie利用を制限した場合、従来のCookieを用いたユーザーターゲティングはできなくなる、もしくは精度が著しく低下することが考えれます。その場合、プラットフォーマーは自社のメディアに広告を表示することが特徴というか売りでもあるので、相対的に地位が高くなると考えられます。プラットフォーマーというのは、FacebookやAmazon、Lineなどのことで、すでに自社で膨大なユーザーを囲っていますし、ターゲティングを行うにも自社のサイトへの広告表示を、自社のCookieを使って行うのでFirst Party Cookieの利用で今回のThird Party Cookieの制限とは関係なさそうです。

3については相当厳しいと思いますね。特にリタゲーティング広告を提供している広告会社にとっては致命的だと思われます。リターゲティング広告とは、ECサイトなどに訪問したユーザーに対して、そのユーザーが閲覧した商品の広告を別サイトなどので表示するような広告ですが、このユーザーこの商品を見た、という情報を保持するのにCookieが利用されるケースが多いのが現状です。このCookieが規制されると、そもそも従来のリターゲティング広告の精度を維持するのがとても難しくなります。代替手段がないこともないのかもしれませんが、圧倒的なユーザーデータを保有するGoogleが2022年まで実運用まで時間をとっていることを考えると、簡単ではないのかもしれません。またGoogleのようにユーザーデータを持っていない企業であれば、さらに困難だと考えられます。世界的にリターゲティング広告で有名な企業ではCriteoがありますが、今後の動向に注目です。国内にもリターゲティング広告を得意にする企業がありますが、こちらの動向も注目です。

4は計測ツールについてですが、こちらのThird Party Cookieを利用していることが多いので、3の広告業者と同じように大きな打撃を受けると予想されます。GoogleはGoogleAnalyticsというサイト分析ツールを基本は無料で提供しているのですが、このツールもThird Party Cookieを利用しているのではないかと思うのですが、使っていないのでしょうか。気になりますね。個人的にも大変お世話になっているツールではあるので、このツールが今後どうなっていくのか注目していきたいと思います。

まとめ

ちょっと年始早々、とても大きなインパクトがあるニュースが飛び込んできたのですが、インターネット上におけるユーザーのプライバシー強化は今後も続いていく大きなトレンドでもあると思うので、今後も大きな発表があるかもしれませんね。ただCookieというインターネットの仕組みを支える基本の技術が転換期を迎えているので、今後の動向次第ではインターネットとそれに関連するビジネスにさらなる大きなインパクトが発表などがあるかもしれませんね。このあたりは今後も個人的にも注目していきたいと思います。