ソニーが2019年6月12日より無料の予測分析サービス「PredictionOne」の提供を開始しました。なぜソニーが、というのが正直な感想でしたが、この分野ではGoogle・Amazon・IBMなどアメリカの企業が大きく先行していて、日系企業には開発できないのかなと思っていたりしたので、少し嬉しかったです。

サービスの売りとしては「数クリックで予測分析ができる」ことのようで、データを用意し、ロードすれば後は簡単な設定をやるだけでAIエンジニアがやっているような分析を自動でできるようです。

ソニーの予測分析エンジンPredictionOne

こちらの動画を見る限りは、AWSやGCPでの機械学習フレームワークというよりは米DataRobot社が提供するサービスにかなり近い印象を持ちました。

AWSやGCPは熟練のエンジニアがより自由に機械学習を使えるようなサービス設計。IBMはコンサルタント・エンジニアと設定でAIで顧客の課題解決を行うサービス。DataRobotは民主化を謳うようにデータさえあれば誰でも機械学習・予測分析できる洗練されたUIが特徴でしたが、ソニーのサービスもUIがわかりやすくとても使いやすい印象です。

また今後どうなるかはわかりませんが、当面は無料で法人に提供されるとのことです。DataRobot社の料金体系はかなりの高額(AIエンジニアを採用するよりはお得で)のような設定だったので、無料で利用できるというのはインパクト大きいです。顧客の囲い込みと、プロダクトの洗練が当面の目的なのかもしれません。こういう無料版でのユーザー獲得からスタートし、十分認知されたところで有料版を投入してビジネスを拡大するやり方はGoogleやAmazonが得意としてきていたのですが、Sonyも本気でWebビジネスを拡大していくつもりなのでしょうか。Web流のやり方ですね。日本の製造業っぽくないです。カッコいいです。頑張って欲しいです。

さて、DataRobot社のサービスをはじめて見たときも思ったのですが、このようなサービスが普及していくとAIエンジニアがいらなくなるかもしれないなと思いました。

データ予測分析のざっくりとした流れとしては、

  1. データの用意・前処理
  2. モデル作成・分析
  3. 予測結果の活用

の3段階あると考えてまして、AIエンジニアしか対応できない領域として2のモデル作成がありました。1と3については、いわゆるエンジニアでも対応できるタスクだったりしますし、企業によっては1と3はエンジニアの仕事と決めている企業もあります。

2についてはプログラミングやソリューションのアーキテクチャを考えたりするエンジニアのキャリアパスというか、通常の開発業務で経験値が得られるノウハウでない統計や数学のバッググラウンドを強く要求される領域だったので、結構習得も大変だったりしました。

しかし、DataRobotやSonyのサービスはそのモデル作成できなくても予測分析ができるようにするサービスなわけで、これがあればエンジニアはますます開発できるプロダクト・サービスの幅が広がります。

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AIによってAIエンジニアの仕事が奪われるのか?

一方、このモデル作成を一番の売りにしているAIエンジニアが今後どうなるかというと、ここ1、2年で叫ばれているほどAIエンジニアの需要はなくなる可能性があるのでは、と思います。人数という意味で。

PredictionOneは自動的に登録されているたくさんのモデルから最適なものを選び出してくれるようですので、モデルを考案し、最適なものを選ぶという仕事が自動化されます。

AIが多くの仕事を奪うのではないか。といった議論が最近メディアなどで取り上げられますが、AIがAIエンジニアの仕事も奪っていくのかもしれません。ただこのようなサービスはAIエンジニアが足りない、という課題から生まれてきていることも理解してるつもり、短期的には足りない枠を埋める効果があると思います。ただ中長期的にこのようなサービスがより精度が上がり、洗練されてきた場合にそうなるのではないかという気がしてます。

ただ、これも難しいのですが全てのAIエンジニアが不要になるかというとそうではなく、例えばPredictionOneのようなサービスに搭載される最先端のモデルを考えたりできる人材は必要です。置き換えられるのは、下位のAIエンジニアというか単純なモデルを回していたようなAIエンジニアです。

パソコンを作るときにインテルのCPUを使えばCPUのこと詳しく分かっていないくてもパソコン作れるようなったけど、やっぱりインテルのCPUを設計開発でいるレベルの人たちは必要ですし、むしろその人たちはより貴重な人になったみたいな感じでしょうか。ちょっとうまく例えられないですが。

何れにしても、どの職種でもそうですが、トップレベルの人たちはいつの時代も必要になるけれども中途半端なレベルの人は不要になっていくのかもしれません。(そんなことないか)ただ、みんなが自由に機械学習・予測分析を使える世の中になって、良いサービスがどんどん世の中に出ていくといいなと思いました。